RISE WORLD SERIES 2024を徹底解説!伊藤隆独占インタビュー

インタビュー 2024年6月7日

■伊藤隆独占インタビュー(インタビュアー:中村拓己さん)

2024年6月15日(土)エディオンアリーナ大阪 第1競技場にて開催されます、RISE WORLD SERIES 2024 OSAKA大会直前!

インタビュアーに中村拓己さんをお迎えして伊藤隆代表のインタビューを独占公開。

 

中村 6月の大阪大会に向けたインタビューをさせていただきます。よろしくお願いします。

伊藤 よろしくお願いします。

 

中村 まずは2024年も6月を迎えるという中で、下半期に向けた大会が続いていきますが、1つの大きな山として12月のGLORYとの65kgトーナメントがありますよね。そこに向けて、RISEとGLORYではどのように動いている状況でしょうか?

伊藤 そこに関しては、日本で予選をしているのとGLORYでも過去2大会でフェザー級(-65kg級)のワンマッチが組まれているんですけど、それは全て予選です。

 

中村 RISEとGLORYでトーナメントに向けて予選が行われているということですね。実際に伊藤さんはGLORYで組まれている予選は見ていますか?

伊藤 見ていますよ。

 

中村 日本だけではなく、海外での65kgというのはどうですか?

伊藤 65kgって次から次へといい選手が出てくるんですよね。前々回大会で勝っていたボボ・サッコや前回大会で勝っていたデニス・ウォシックとか、代謝が激しいのか良い選手がたくさん出てきています。

 

中村 僕もGLORYを見ていて、ボボ・サッコはムエタイで実績のある選手ですけど、GLORYに来ていきなりKO勝ちしたり、RISEがこのトーナメントをやるということに対して、階級自体が世界的に盛り上がっているなと感じますね。

伊藤 そうですね。ミゲールもそうじゃないですか。チャドをKOする番狂せも起こしましたし、ここら辺の選手がどんどん集まってくると思うので、GLORYの方で予選から4名とRISEの予選から4名という形で決まっていくので、6月と9月が最終予選になりますけれども、そこら辺で絞られてきます。

 

中村 GLORYとの提携だったり、トーナメントを発表したことで、海外の選手やプロモーターからコンタクトが増えてきていますか?

伊藤 世界各国、選手から直接もありますしプロモーターもありますし、いろんな選手から問い合わせがあります。

 

 

中村 伊藤さんのSNSとかに「RISEに出してくれ」みたいなメッセージも来たりするんですか?

伊藤 あります。後は関係者からも来ます。

 

中村 特に今年はRISEっていうイベント自体が今までとは違った形で、より世界に広がっているなというきっかけになる1年かと思うのですが、そういった手応えは感じていますか?

伊藤 65kgという階級が日本人でも活躍できて良い階級なんじゃないかなと思いますね。今まで70kgしかなかったからそこに合わせていましたけど、65kgという階級ができてそこに皆んな照準を絞ってきていて、上の階級の選手も下に落として出てきているので、世界的には注目される階級だと思います。

 

中村 そういった中で65kgの試合はもちろんのこと、この大阪大会ではまた日本人選手と海外の強豪選手との試合が並びましたが、日本人がRISEの中で活躍して実績を積んで外国人選手に立ち向かっていくハードな道は、イベントの中で大事に組んでいきたいと考えているんですか?

伊藤 日本人選手が世界でどこまで通用するのかっていうのを僕らもやっていきたいですし、選手たちもそこを求めていると思うので、もちろん海外に行かせる試合もありますし、国内で外国人選手と闘うパターンもあるのでどんどんやっていきたいです。

 

中村 今大会の各試合についてもお伺いしたいんですけど、田丸選手は韓国のジョン・ヒョヌ選手と試合が決まっています。前回の志朗選手との試合は消化不良で終わってしまって仕切り直しの1戦ですが、この試合に関して伊藤さんが期待することはありますか?

伊藤 田丸辰は今回、53kgのベスト体重での試合ということもありますし、相手も日本人無敗でパンチが凄く強い韓国の選手なんですけども、54kgの王者ですけど本来の53kgの試合ということで、王道でチャンピオンとしての試合を見たいです。

 

中村 去年すごく良くて、前回はアクシデントでしたがまだその続きが見せられていないところもありますよね。そういった意味ではここからが本当の勝負になりますね。

伊藤 王者になってから試合が落ちるんじゃなくて、もっと強くなっていかないと王者としての価値も落ちてしまうので、辰は今年は勝負の年ですよ。

 

中村 今まではトーナメントで勝てば評価が上がる試合だったと思うのですが、ここからは内容とか勝ち方とかより高いものが求められてくると思います。そこはきちっとクリアしてほしい期待はありますか?

伊藤 まさにその通りですね。前回のRISE178での大﨑孔稀もそうですけれど、相手が3回変わった中であの様な試合をするのがチャンピオンとしての最低条件というか必要なことであって、辰もここで中村さんが仰ったように、素晴らしい試合を求められる状況なので、それを期待したいです。

 

中村 階級的には53kgが主戦場だと思うのですが前回55kgで志朗選手と闘って、今後の展開や田丸選手と話していることはありますか?

伊藤 田丸も志朗も話しているのですが、どちらも決着をつけたいという意志が強いんですよね。6月に両選手の試合が決まっているので、次のビッグマッチではもう1回やらせなきゃなという思いがあります。

 

中村 本人たちもあそこで納得しきれていないという気持ちがあるんですね。

伊藤 あれは納得できないと思います。お互いが気分悪いと思いますし、ファンの方々も消化不良で終わっちゃいますし、そこは実現させたいです。

 

 

中村 チャンピオンになってからの試合というところでは、大雅選手がダニエル・プエルタス選手と試合が決まりましたが、これは大雅選手も燃えているカードだと思うのですが、このカードを組んだ1番のポイントはどんなところにありますか?

伊藤 これは大雅本人が対戦を希望した選手なんですよ。ONEでタイトルマッチもしていますし、非常に強い選手です。これも辰と同じでチャンピオンになっての第1戦です。来年61kg界隈でワールドシリーズを開催したいと思っておりますので、このプエルタスも主力選手になっていくと思うんですよね。両者にはトーナメントを象徴する様な試合内容を見せてほしいですね。

 

中村 大雅選手に関しては、伊藤さんから見て前回のタイトルマッチを含めてどんな所が変わって良くなっている感じがありますか?

伊藤 1番はメンタル面じゃないですかね。才能が元々ある選手なので、心の部分がやっとまとまってきたのかなと思います。

 

中村 タイトルをとって次の相手がONEで活躍して、スーパーレックとも闘ったダニエルというのは燃える材料が増えましたね。

伊藤 彼自身がそういう子なので、常に強い選手とやりたいっていう部分があります。

 

中村 ダニエルって過去の試合を見ても、相当頑丈で強いじゃないですか。このダニエルの方にも期待している部分はありますか?

伊藤 もちろん期待していますし、来年トーナメントをやるということも話していますし、どの様な試合を見せてもらえるのかっていうのは非常に楽しみです。

 

中村 これは本当に蓋を開けてみないとどんな試合になるのか分からないですね。

伊藤 僕も内容重視で勝ち負けだけで判断するつもりはないんですね。実績だったり内容だったりを重視したいと思っています。

 

 

中村 そして中村寛選手はタリソン・フェレイラ選手との対戦が決まっていますが、これは元々一度計画されていたカードがこのタイミングで実現されたと聞いています。

伊藤 3月のELDORADOで決まっていたんですけど、タリソンのバイク事故で流れてしまいましたが、中村自身も求めていた試合なので実現しました。中村も今後、61kg界隈に落とすという目標があるので、中村寛、大雅、ダニエル・プエルタス、もちろんチャンヒョン・リーもいますし、そこらへんのメンツがゴロゴロ出てきます。タリソンもベストが61.5kgなので、今回の試合内容では彼もそこにも入ってきます。

 

中村 じゃあ65kgのトーナメントに向けた流れがありつつ、実はここで61kg、61.5kg界隈の新しい流れができてくるんですね。

伊藤 はい。

 

中村 中村選手は前回の与座選手との試合の後、怪我があったり採点のこともありましたが、その後伊藤さんがお話しされてどんな感じでしたか?

伊藤 全部吹っ切れていましたね。自分の中で全部受け入れて、次に向けて頑張るという感じです。やっぱり彼は63kgだと小さいんですよね。パワーは負けていないんですけど、リーチの部分だったり体が小さいので、今後は階級を下げていきたいという本人の希望もあるので、そういった意味で来年のトーナメントに向けて徐々に階級を落として挑戦していってほしいなと思います。

 

中村 元々パワーと爆発力がある選手なので、もっと適正体重だったら攻撃力やスピードが活きてきそうですね。

伊藤 大雅もそうじゃないですか。63kgだといい結果を出せないけど、60kgや61kg界隈だといい動きができるので、その2kgの差はデカいと思います。

 

中村 ただタリソンも1発があって本当に危険な選手なので、この2人が闘ったらどうなるんだろうと気になりますね。

伊藤 これは間違いなく面白くなると思いますよ。混ぜるな危険じゃないですけど、ものすごい試合になると思います。

 

中村 先ほど試合内容という部分でもそうですけど、外国人選手でも負けても良い試合をした選手というのは、どんどん使って日本での知名度と人気をつけていきたいという思いはありますか?

伊藤 いつも僕が計量や来日した時に、彼らと喋る時には必ず同じことを言いますね。勝ち負けも重要だけど、良い試合をすれば次もオファーしますと。だから必ず良い試合をしてくださいと。

 

中村 日本人選手はもちろん、外国人選手もRISEイズムがしっかり伝わっているんですね。

伊藤 そうですね。勝ち負けじゃなくて内容ですよね。

 

中村 南原選手に関しては、ジェシー選手との対戦が決まりました。重量級の選手はどうしても対外国人選手というのが他の階級よりもチャレンジになってくると思うのですが、そういった部分での南原選手の闘いぶりだったり、対外国人選手にはどんなことを期待されていますか?

伊藤 世界的には南原の階級は沢山いるので、彼がもしGLORYでやるなら85kgという階級があるので、そこに絞ることになると思うんですけど、ヘビー級に関しては技術よりパワーでねじ伏せられちゃう部分があるので、しっかり育てていきたいですね。今回はWBCオーストラリアチャンピオンですけども、彼は今後も外国人と闘っていく場面が多くなると思います。

 

中村 もちろん外国人選手に通用する部分と、伸ばさなきゃいけない部分の両方があると思うんですけど、今の南原選手の良い部分はどんな所がありますか?

伊藤 良い部分は吹っ切った時の凄さですかね。大体南原って1回倒されるじゃないですか。そこからがまた強いというか。ただこれからの上の選手は1発でひっくり返されて終わっちゃうパターンもあるので、そこのディフェンス力というかもう少しボクシング技術を上げてほしいですね。

 

中村 倒されてももう1回立ち上がって逆転できるとかって、持って生まれた闘争本能というか、ただ技術だけじゃないじゃないですか。

伊藤 ハートが強いというかまさに押忍ですよね。極真会館の決して諦めないっていうのを体現していますよね。

 

中村 さっきの育てるっていうのは、キャリアで段階を踏んで、色んな選手たちとやってきたと思うんですけど、そういった意味ではここから本格的に外国人選手と当てていくという段階に入っているという感じですね。

伊藤 そうですね、その段階ですね。

 

中村 あの1発の気持ちとか技のキレとか多彩さは他の日本人選手にはないですよね。

伊藤 だから日本のヘビー級ってただ大きいだけの選手って多いじゃないですか。その中でも動ける選手だと思うので、そこら辺は見せられると思いますね。

 

中村 ここはやっぱり重量級らしいド派手な試合を大阪でも期待しますか?

伊藤 南原なら間違いなくやると思います。

 

 

中村 そして最初に触れていた65kgでいうと白鳥選手がペトル・モラリ選手と試合が決まっています。白鳥選手は前回、惜しいというか星を落としてしまって、このトーナメントに向けては負けられない試合になってきますがこの辺はいかがでしょうか?

伊藤 まさに白鳥は背水の陣ですね。ただ彼自身が持っているのは凄いんです。WORLD SERIESのトーナメントで優勝した動きもザカリア戦で見せることができましたし。前回は落としてしまいましたけど、さっき言ったように負けだけで終わりではなくて、白鳥自身の良い動きができているので、だからもう1回チャンスを与えるというかここで挑戦権を掴み取ってほしいです。

 

中村 決してパフォーマンスが落ちているということではないですよね。

伊藤 白鳥に関しては特に波がある選手なので、キープするようになったら攻撃力もありますしすごく良い選手です。

 

中村 そこでペトル選手が対戦相手で、この選手も65kgに照準を合わせてきたと思います。ペトル選手はトーナメントを65kgでやると言ったら65kgで試合をしたいとリクエストがあったんですか?

伊藤 元々が65kgだったんですよ。最初に来日した時は相手がいなくて、中野椋太との67.5kgだったんですね。67.5kgでフィジカルで押し勝ったように、フィジカルが強い選手なので白鳥はどうやって対応できるかという所が見どころだと思います。

 

中村 白鳥選手からしたら苦手なタイプそうですね。

伊藤 ザカリアを一度経験しているので、そういうような動きができたらまた違うんじゃないかな。ペトルはゴリゴリに押してくると思います。

 

中村 逆にいうと白鳥選手も倒せるイメージがあるというわけですね。

伊藤 来る分当てられるので、カウンターが光るんじゃないかと思います。

 

中村 前に出てくるペトルと上手く戦ってという感じですね。

伊藤 どういう戦い方をするのかは分からないですけども、彼は真っ直ぐ下がりだすと弱みが見えちゃう部分があるので、そこを横に動くのか逆に前に出るのかカウンターを狙うのかっていうパターンがあると思うんですけど、そういうやり方をすれば勝機を見出せるんじゃないかなと思います。

 

中村 今お話を聞いていて、日本人選手が外国人選手に挑む中でも、ただ外国人選手と戦うだけじゃなくてそれぞれテーマもあるし、勝つだけではなくて山を乗り越える所が皆んな一様にテーマとしてあるんですね。

伊藤 そうです。

 

中村 65kgでいうと、原口選手がいよいよペットパノムルンとGLORYのタイトルマッチが決まって、本人もコメントされていたように紆余曲折があり期間が空いてしましたが、この試合に世界戦略という部分ではRISEの選手がGLORYに出てタイトルに挑むっていうのが大きな出来事だと思います。この試合に関して試合が決まった流れを教えていただけますか?

伊藤 元々は4月27日のフランス大会で決まっていたんですけど、ペットパノムルンが怪我をしちゃったんですね。昨年のチャド・コリンズ戦で左足を怪我して手術になってしまいまして、回復が間に合わないと。その後6月15日の大阪大会でGLORYサイドもほぼOKだったんですけど、そこでもまだ回復が間に合わないとなって、うちとしても年末のスケジュールがあるので上半期までにやらないと間に合わないという事で、7月20日にオランダ大会でやっと決めることができました。

中村 原口選手としてはペットパノムルン以外とはやりたくないというか、見ていない感じだったんですか?

伊藤 そうなんですよ、こだわりがあって別に消化試合はやらないと。彼自身のペットパノムルン以外とはやりたくないという思いが通じたのかなと思いますよね。本当に7月20日が流れたらどうするの?っていう感じもあったんですけど、彼自身の思いが伝わりましたね。

 

中村 対戦戦績でいうと2度戦って敗れていて、今回はGLORYルールで向こうに乗り込んでの試合ですけど、原口選手も前回の試合から充実していると思うので、今回はどういった展開になりそうですか?

伊藤 色々と彼自身の弱みの部分、組んだ部分も全部やっていて、原口自身はすごく自信がありますね。ただ時差もあるので、開始されるのが日本時間でいうと朝方の3時か4時だと思うんですね。そういった部分も踏まえて早めに現地に行かせて、サポートできる人間を連れて行かせるというのは考えています。

 

中村 RISEとして彼を全面サポートして、向こうでベルトを獲ってきてきてもらいたいという思いはありますか?

伊藤 獲らせる環境を作るのが僕らの仕事なので、あとは彼がパフォーマンスできるかどうかという事で、最大限のサポートをしたいと思っています。

 

中村 先程はRISEでのトーナメントの話をお伺いしましたけど、選手が海外に出ていくという様な対世界の形がRISEにはあるなと思いました。そこに関しては選手にとって色んな可能性を広げていきたいですか?

伊藤 65kg以上はGLORYだったりするし、その下の階級はONEフライデーナイトに安本が出場したようにタイミングが合えばどんどん出していきたいと思ってますので、どんどんチャンスを与えて経験を積んで強くなって戻ってきてもらうとか、そういう風にしていきたいですね。

 

中村 後楽園大会で日本人選手が競り合って力をつけて、ビッグイベントで世界と闘って、もっとそこで勝ち上がっていけば海外のベルトに挑戦したりとかビッグマッチが組まれたりとか、日本でできていたシステムが世界に広がっているなっていうのは非常に感じます。

伊藤 そうですね。

 

 

中村 大阪大会では色んな試合が組まれている中で、ベルトをかけた試合という部分では大﨑選手と政所選手の試合が組まれていて、この試合をこのタイミングで組んだ理由というのはどんなところでしょうか?

伊藤 政所が昨年のトーナメントで優勝した部分もありますし、名古屋と大阪っていう部分もあったので地元でやってあげた方が良いかなという思いもありました。大﨑は昨年のトーナメントで田丸辰に負けてしまったり、そのあとの試合もあまり良くなかったかな。ただ彼自身は4年間タイトルをずっと持っている状況なんですよ。そんな中で政所が優勝して、これはもうビッグマッチでやるしかないなと考えていました。

 

中村 僕もRISEの試合を見ていて、政所選手が急激に強くなった気がするんですけど、そういった変化は感じましたか?

伊藤 急激に強くなりましたよね。政所は強いんですけど、今までは一歩が足りなかったんですよ。勝ちに徹してしまったりとか、流したりというのがあったんですけど、そういう部分で評価されなかった部分があったと思うんですよ。そこを素直に受け入れて前回のトーナメントで倒して変わったと思うんですよね。「ただ勝てばいいんじゃないんだ」という思いが選手はプロだからそれもあるけど、どっちかっていうとリスクを背負いたくないから流す時もあるじゃないですか。勝ちに徹してしまう時もあるんですけど、それを全部取り去りましたよね。だからまさに挑戦者に相応しい選手になったと思います。

 

中村 僕も実際ライター活動に戻って、最初に見たRISEの試合が昨年8月の大田区の大会で、確かあそこでスペインの選手にKO勝ちしていましたよね。あの試合を見た時にすごく印象が変わったなと、こんな選手だったんだと1番驚いたのが実は政所選手でした。その後も勝ち続けていて、そう考えるとあの試合で殻を破ったという感じですかね?

伊藤 そうですね。結構政所って色々と欲しがりな選手なんですよ。色んなものを「俺はこんなに頑張っている」というタイプなんですけども、それと試合内容が一緒になったというか。勝っているけどチャンスをもらえなかった選手って多々いると思うんですけど、それは前半で話した通りの選手になっちゃうというか、その殻を破ってくれたというのは大きいですよね。

 

中村 本人的にも充実していて、選手としていわゆる“ノっている”状態ですよね。

伊藤 今凄いノっているんじゃないですかね。

 

中村 一方の大﨑選手はトーナメントで星を落としてしまったり、直近2試合があまり良いパフォーマンスができていなかったりする一方で、しっかりクリアしていくという意味では地力もあるかなと思うんですけど、伊藤さんはこの1年の大崎の試合ぶりをどの様にご覧になっていますか?

伊藤 やはりトーナメントに出る前までは良かったんですけど、トーナメントに出て田丸辰戦辺りから迷いがありますよね。あのレベルになるとみんな対策を練るじゃないですか。今まで通りの大﨑のローキックからボディで上へとかの攻撃が通用しなくなってきているので、ここからが彼の勝負所です。ただ53kgでもナンバーワンの破壊力を持っています。それからこの勝者は辰と絡むだろうし、一貴はここを勝つかどうかで名古屋大会をやるかやらないかという部分もあるので、本当に勝ったら兄弟参戦で名古屋大会もやりたいと思っているので、そういう部分もかかっているので気合が入っていると思います。

 

 

中村 やはりチャンピオンになる事で、周りにマークされるし研究されて弱点も突かれるしそこも課題になるでしょうし、自分のやりたい事や目標を達成するためにはその困難を乗り越えないといけないというところにいますよね。

伊藤 そうですね。ここは通過する過程で、強いやつは倒しますから。

 

中村 この2人がビッグマッチのメインでタイトルマッチを堂々とやるというのは、伊藤さんも感慨深いですよね。

伊藤 感慨深いですよね。特に政所の成長が今回のタイトルマッチを盛り上げたと思うので、政所も本当に頑張ったと思います。政所は田丸辰に勝っていますし、ここでチャンピオンになるようなら一気に行くんじゃないですかね。

 

中村 同じ軽量級という部分では、数島大陸選手とタイ人選手との試合、そして那須川龍心選手と塚本望夢選手の試合がありますけども、まずは数島選手の試合に関してはどんなところに注目していますか?

伊藤 今回の対戦相手のタイ人選手はかなりパンチも蹴りもアグレッシブルに出す攻撃的な選手なんですよね。だから前回の数島はタイ人選手に勝ちましたけど、あまり良いと言える内容ではなかったので、今回は試合内容で払拭するような戦いを見せてほしいですね。

 

中村 伊藤さんも現役時代はタイ人の選手と試合をしてきたと思いますが、やはり他とは違うものですか?

伊藤 懐が深いというか、キャリアも沢山積んでいる部分もあるし、駆け引きが上手いんですよね。ただそれを乗り越えて倒すのがRISEのチャンピオンなので。

 

中村 相手が上手いとか駆け引きできるのは分かっている事だから突破してほしいという感じですかね。

伊藤 今回はそこが課題じゃないですかね。前回の試合もひっくり返すような良い試合をしてもらいたいです。

 

 

中村 龍心選手と塚本選手の試合も組まれていますけど、この2人の試合は伊藤さんはどのように予想されますか?

伊藤 今フライ級の中では華があって人気も凄い2人なので、その日1番盛り上がるんじゃないですかね。

 

中村 龍心選手の前回3月の試合が凄く安定感があるというか、迷いがなく「自分はこれで勝つ」みたいなスタイルを見つけた感じがしました。

伊藤 龍心スタイルというんですかね。倒すだけじゃなく圧倒的に勝つ、魅せて勝つというのが確立できていました。

 

中村 ああいった1つの形ができれば、またそこから倒せる武器を作っていく段階だと思うので、化けるきっかけにもなってきそうですね。

伊藤 ここで勝った方がそのまま数島とタイトルマッチになるでしょうし、ただ重要なのは挑戦者としての試合をしてくれと、勝ちに徹するのではなくしっかりした内容で勝ってほしいなという思いがあります。

 

中村 塚本選手もそこは同じですかね?

伊藤 そうですね。望夢は前回良かったんですけど後半流してしまった部分があったので、それは技術としては凄い事なんですけども、RISEではそこは求められていないので、気持ちのこもる挑戦者として相応しい内容の試合をしてほしいです。

 

中村 数島選手も同じ日にタイ人の選手と試合が決まっていて、同じ階級で2試合が並んで、1番挑戦権に近い2人の対戦だと思うので、尚更チャンピオンに対してだったりお客さんに対して「これが挑戦者で間違いないでしょ」ってところまで見せてほしいですか?

伊藤 それは重要ですね。やはりそれでチャンピオンも「やってやるよ」という気持ちになるだろうし、ファンのみんなも「これだったら面白いんじゃない?」ってなる事が1番重要な事ですよね。

 

中村 逆に言うと、チャンピオンの数島選手の方が「これだったら挑戦する意味ある?」って試合をやってしまったらダメって事ですもんね。

伊藤 それはダメですよね。チャンピオンに優先権の権利がありますから。

 

中村 この2試合に関しては階級のつながりも見つつ楽しんでいただきたいですね。

伊藤 数島大陸、塚本望夢、那須川龍心の3人を比べてもらったらと思います。

 

 

中村 今大会の1つのサプライズ枠だったのが宇佐美 秀 メイソン選手の参戦で、しかもいきなり中野選手と試合というのはWインパクトがありました。メイソン選手の参戦に関して改めてお話を聞かせてもらえますか?

伊藤 元々僕も彼の試合を拝見させていただいていて、非常に才能があって華もあるし、良い選手だなと思っていました。その中で色々と話をさせていただく中で、彼自身がトップでやりたいと言っていて、ゆっくりやる気持ちはないみたいなんですよね。とにかくトップでやらせてほしいという事で、中野サイドに打診したらやりますという事だったのでカードを組みました。メイソン自身にはかなりきつい試合内容になると思うんですけど、万が一メイソンが勝つ事があればまた更に強くなるだろうし、中野は勝てば流石王者ということにもなります。中野に関してはこの67.5kgの試合を機に、次は65kgのトーナメントに照準を絞るので、彼自身もその先があるので気持ちと気持ちのぶつかり合いで面白い試合だと思います。

 

中村 マッチメイクって色々なストーリーを重ねていって高まる試合もあれば、いきなりドンで面白いってパターンもあるんですけど、まさに後者のような対戦カードですね。

伊藤 このやり方ってRISEらしいですよね。いきなりこれ組んじゃうのっていうのが結構多くないですか。どんどんいっちゃうというか。笑

 

 

中村 いきなりチャンピオンと闘わせるとか多いですよね。

伊藤 これは両者がOK出したので、だからこそ決まった試合ですけども、メイソンは67.5kg前後もできなくて67.5kg丁度がベストなので、将来的には結果云々があると思いますがタイトルを目指してほしいですね。

 

中村 中野選手もRISEのチャンピオンでキャリアを積んできて、周りの目とか勢いで言うとメイソン選手かなと思いますけど、そんな楽にはいかないですよね。

伊藤 中野は地力がありますよ。パンチだけの刺しあいだったらメイソンが上手いかもしれないですけど、足技だったり膝だったりを中野は持っているので、経験値も高いですしメイソンはそんな簡単にいかないと思います。

 

中村 今後の展開としては、メイソン選手が勝てば次のチャンスがあるでしょうし、中野選手が勝てばこれを手土産に65kgへ照準を絞ると思うのでそこも注目していきたいなと思います。

伊藤 はい。

 

 

中村 あとは大阪大会ならではというか、山口兄弟がオープンフィンガーグローブマッチ(OFGM)で出陣です。OFGMはYA-MAN選手の印象が強いですが、元々は2人がスタートのきっかけだったと思うので、この2人の地元大阪でしかもOFGMでというところではどんな試合にしてほしいですか?

伊藤 先ほど仰ってくれたように2人のために作ったOFGMなんですよね。彼らはRISEのOFGMの試合に誇りを持っていて、そのルール以外やらないんですよ。グローブをやらないじゃないですか。RISEではOFGMルールでしかやらないっていうくらいのこだわりがあるので、その思いを見せてほしいですね。山口裕人の相手は伊藤澄哉で一気に登ってきている選手なので、これぞOFGMという試合を2人には見せてもらいたいです。

 

中村 前回のRISE178で行われた女子OFGMもそうですけど、やはり明らかに雰囲気が変わりますよね。

伊藤 痛々しいですよね。僕も前回の小林愛理奈と小林愛三の試合を見ていて、ソワソワしてお尻が浮いちゃう感じがしました。

 

中村 でもそういう試合もありつつ、OFGMの試合も見るんですけど、ただ凄惨なだけじゃなくてそこに選手の気持ちだったり、それこそテクニカルな部分が合わさると1番お客さんが盛り上がるのかなと思って見ていました。そういう部分では色んなオープンフィンガーグローブが採用されていますけど、RISEらしさっていうのはこれから出てくるのかなと思いますね。

伊藤 まさにそうだと思います。

 

中村 あとは関西の選手でいうと憂也選手とか拳剛選手とかKING龍蔵選手とか、ここからの関西勢の選手に伊藤さんが期待することはありますか?

伊藤 まず憂也ですけども、RIZINでは4連続KO勝ちしているんですよね。ただここ1番って時が弱いんですよ。ここを勝ったらその先があるって言う時にRISEでは結構落としちゃう時があります。今回はシンパヤックというタイ人選手が相手ですけども、ここの勝負の時に上がれるかどうかだと思うんですよ。同門の政所がなったように、ここで掴み取る事ができれば良いなという願いはあります。

 

中村 逆にいうとファイターとしてのポテンシャルとかも、先ほどのレコードを見るだけでも十分ですよね。

伊藤 もう1段階取れるかっていうところですね。あと一歩をとってほしいんですよね。

 

中村 そういったところで選手の変わる瞬間などが見られればいいですね。

伊藤 同門の政所が同じことをしているので、憂也本人にもなってほしいなっていうのはありますね。

 

中村 大阪大会もまたバラエティ豊かなカードが並んでいますが、ここを終えるとここからまたビッグマッチが迫ってきますよね。

伊藤 9月8日横浜BUNTAIですね。

 

中村 そこにも続いてくると思うんですけど、今言える範囲で伊藤さんの考えている9月または年末に向けての展望はいかがですか?

伊藤 まずは65kgの予選ですね。7月20日の原口の状況もあるんですけど、原口も出てもらいますし、チャド・コリンズも出します。ミゲール・トリンダーデも出します。あとはイ・ソンヒョンもまた予選をやらせますし、あとは61kg界隈で中村あたりも組みますし大雅やチャンヒョン・リーも出すと思います。他にも参戦予定の選手がいるので発表できたらなと思います。

 

中村 僕も試合を組んでいた時に思ったんですけど、そうやっていくと大会が足りなくなっちゃいますよね。笑

伊藤 そうなんですよ。後楽園もありますけど、ビッグマッチが足りなくなるんですよね。嬉しい悲鳴なんですけど、極力選手たちの戦う場は作ってあげたいです。

 

中村 その一方、前回の小林対決のOFGMとか志朗選手が6月大会の後楽園に出るとか、後楽園でもビッグネームの選手が出てくるというところも、一つの興行のフックになっているのかなと思っています。

伊藤 後楽園だからこそ見せたい試合というのがあるじゃないですか。志朗の後楽園のリングに立つのは4年ぶりかな?志朗の後楽園の試合は凄いお得だと思うんですよね。そういうのを後楽園でも提供していきたいと思っています。ある意味ファンサービスという形で。

 

中村 志朗選手が4年ぶりと聞いて、今後のキャリアを考えたら志朗が後楽園に出ることも下手したらもうないかもしれないじゃないですか。だから後楽園での志朗の姿も楽しみです。

伊藤 新鮮ですよね。

 

中村 大阪をきっかけに大会が盛り上がっていくのを楽しみにしています。今日はありがとうございました。

伊藤 ありがとうございました。

 

【前編】伊藤隆独占インタビュー!超強豪外国人襲来のRISE大阪大会を徹底解説!

 

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