野良犬魂注入で殻を破れ!麻火佑太郎が森井洋介のもとで猛特訓【RISE WORLD SERIES 2025 FINAL】特別企画<2>
インタビュー 2025年10月27日
2025年11月2日(日)にて東京・両国国技館開催されます『RISE WORLD SERIES 2025 FINAL』特別企画として、出場選手の合宿や出稽古の様子をレポートいたします。
第二弾は麻火佑太郎選手&DOG OUT森井洋介代表です。

この一年は麻火佑太郎にとって成長の手応えとトップファイターの壁を感じた年だった。
2024年4月にONE Friday Fightsでムエタイのビッグネーム=セクサン・オー・クワンムアンから殊勲の勝利を奪った麻火だが、9月のRISE横浜大会ではRISE世界スーパーライト級王者チャド・コリンズに1RKO負け。12月のGLORY RISE FEATHER WEIGHT GRAND PRIXのリザーブファイトではヤン・カッファを飛びヒザ蹴りで沈めたものの、今年3月のRISE両国大会では第5代スーパーライト級王座決定戦で白鳥大珠に判定で敗れた。
GLORY×RISE LAST FEATHERWEIGHT(-65kg)STANDING TOURNAMENTもシード外からの参戦となり、1回戦でエドゥアルド・カタリンにKO勝ちを収めて、2回戦に駒を進めた形だ。
チャド戦以降の戦績が白星と黒星を繰り返していることからも分かるように、チャンピオンクラス以外の選手には勝てるものの、チャンピオンクラスの選手には跳ね返される。それが今の麻火が置かれている立場だ。
麻火を2回戦で待ち受けるのは元RISEライト級&ミドル級級王者で、常にRISEのトップ戦線を走り続けてきたイ・ソンヒョン。まさに今麻火が直面している壁を乗り越えなければ勝てない相手である。この一戦を前に麻火が志願したのが現DOG OUT森井洋介代表のもとへの弟子入りだった。
現役時代の森井は外国人として初めてムエタイの頂点・ラジャダムナンスタジアム王者となった藤原敏男さん率いる藤原ジムに所属し、数々の激闘や名勝負を連発。特に2017年に行われたKING OF KNOCK OUT初代ライト級王座決定トーナメントでは全試合KO決着でトーナメント優勝を果たした。また藤原ジムの兄弟子で“野良犬”と呼ばれた名キックボクサー小林聡を彷彿とさせる殺気の伝わる戦いぶりで“野良犬2世”とも呼ばれていた。
麻火と森井は同じ長野県上田市出身で(※小林も長野出身)。麻火にとって森井は憧れの存在で、これまで何度か練習を共にしたことがある間柄。今回は麻火が自分に足りない殺気や限界を超える術を身につけるべく、森井にマンツーマンでの指導をリクエストした。
「去年9月のチャド・コリンズ戦では、どれだけテクニックを練習しても、それを潰すだけのメンタルやフィジカルを持っている選手と対峙すると、自分のテクニックを出す前に飲み込まれてしまうんだなと思いました。そういう相手に勝つためには、強い精神力が絶対に必要だと思って森井さんに特訓をお願いしました」(麻火)
「自分も麻火選手とチャド・コリンズ選手の試合を見ていて、試合前は絶対にいけると思っていたんですよ。それで麻火選手が勝てなかったのは、まさに気持ちの部分じゃないですけど、もし麻火選手に気持ちの強さがあったら全然にああいう展開にはならなかったと思います。麻火選手は技術面ではものすごくレベルが高いので、あとはメンタル面。自分の殻を破る練習が必要だと思います」(森井)
森井が麻火に課した練習は至ってシンプル。”自分の殻を破る”ための練習だ。麻火がウォーミングアップを済ませると、いきなりサンドバッグを使ったラッシュが始まる。このサンドバッグはラウンド数が決まっておらず、森井が麻火の息が上がったと判断するまで終わらない。「早く強く打て!」と森井の檄が飛ぶなか、麻火は一心不乱にサンドバッグを叩き続けた。

サンドバックを終えると、インターバルを入れずにリングに移動してビッグミットが始まる。これも森井が持つビッグミットに麻火がパンチと蹴りを打ち込み、森井がOKを出すまで延々と続く。試合ではクールな印象の麻火がなりふり構わず必死の形相で殴る・蹴るを繰り返して、ようやく森井による特訓が終わりを迎えた。練習後、改めて2人にこの日の特訓を振り返ってもらった。
「今日は現役時代に自分がやっていた練習の一部を少しやってもらおうと思い、指導させていただきました。この練習をやると倒すことにブレがなくなるというか、普通は試合で倒しにいくと結構不安になるんですよ。スタミナが切れないか?とか倒せなかったらどうしよう?とか。でもこの練習を普段からやっていると試合で倒しきれるようになるんで、自分はKO率が上がりました。
この練習は自分との戦いですし、試合をイメージしながらやることで『相手がこう来たらこうやる』というものも見えてくる。あの追い込みの中でそれが見える・想像できるというのは、いわゆるゾーンに入ってるんだと思うんです。練習からゾーンに入っていると、試合の時にものすごく自分のイメージ通りに動けて、全然疲れないんですよね」(森井)
「今まで自分はテクニックメインのことをやってきてたんですけど、今日はテクニックもありつつ気持ちを向上させる練習だったと思います。森井さんがこれを毎日やっていたというのが改めてすごいし、あの激闘や熱い試合はこの練習から生まれてるんだなというのを肌で感じることができて、成長できたと思います。
森井さんの話を聞いていて、ああいう練習の中で、ほとんど余裕がなくて酸欠になりそうな状態でも試合を想像しながら追い込めるのはすごいなと思いました。自分も相手のレベルが上がってくれば、試合中に絶対にそういう展開があると思うので、今日肌で感じたことを試合で活かしたいです」(麻火)
森井は“殻を破る”という言葉を繰り返したが、麻火VSソンヒョン戦に向けて「ソンヒョン選手は打たれ強くて淡々と上手い選手なので、麻火選手が攻めていく中で『この選手ホントに倒れるのか?』と不安になると思うんですよ。そうなった時にいかに腹を括って殻を破って攻め続けられるか。そこで試合結果も変わると思う」と話す。麻火自身、短い時間ながら森井の指導を受けたことで殻を破るきっかけを掴んだ。

「僕は大事な試合の中で、自分が突き抜けたと感じたことが数試合しかなかったので、それを持ってこることが必要だと思います。大事な試合で突き抜けたり、殻を破っていける選手がチャンピオンになれる選手だと思っているし、次のソンヒョン戦ではそれができるんじゃないかなと思っています。
ソンヒョン選手は長い期間RISEや世界のトップでやってきた選手なので、その経験値や精神力は本当にすごいものがあると思います。そのソンヒョン選手に自分がどう勝つか。トーナメントの準決勝や決勝に向けても、今回の試合はかなり大事な一戦なので、結果だけでなく僕の勝ち方を見ていただきたいですね。『麻火、殻を破ったな!』と思ってもらえる展開で勝ちたいです」(麻火)
GLORY×RISE LAST FEATHERWEIGHT(-65kg)STANDING TOURNAMENTは2回戦からシード選手たちが登場し、一気にトーナメントのレベルも上がる。麻火は昨年のトーナメントに挑んだ時との心境の違いを明かし、森井は「このトーナメントに全てをかけることが優勝の秘訣」とアドバイスを送った。
「去年12月、僕は世界トーナメントのリザーバーとして試合を見ていて、悔しい気持ちを感じる一方で、どこかレベルの高い遠い世界の出来事のように感じてしまったところがあったんです。今年のトーナメントで再起するまでの過程で、本気で世界一になるために世界一になることを意識してやろうと気持ちを変えました。一回戦を無事クリアして、ここから世界一になるためには4回勝つ必要がありますが、一戦一戦大きく成長して、今はダークホースと言われていますが、最終的にはアイツが本命だなと思ってもらえるような選手になりたいと思います」(麻火)
「僕がトーナメントで優勝した時は、トーナメントの先のことは一切考えてないというか、本気でトーナメントに命をかけて、試合が終わったらどうなってもいいという気持ちで戦いました。麻火選手もこのトーナメントで全部出し切るじゃないですけど、トーナメントにすべてをかけて、そうやって自分にプレッシャーをかけると、それが力になると思うし、それだけかけた方が麻火選手のためにもなると思います。あれだけの強豪がいるトーナメントなので、それぐらいの覚悟がないと優勝できないと思うので、このトーナメントに全てをかけることが優勝の秘訣だと思います」(森井)
取材の最後に「森井さんが何度も言葉をかけてくださったように、いかに殻を破れるかですね。森井さんもそこを意識してきたからこそ、トップに上り詰めたと思うし、僕もジムは所属は違うんですけど、勝手に野良犬魂を引き継がせていただいて、このトーナメント挑みたいなと思います」と語った麻火。森井から譲り受けた野良犬魂で殻を打ち破り、ソンヒョンの壁を超えることができるか?

■11月2日(日) RISE WORLD SERIES 2025 FINAL
第10試合 GLORY×RISE LAST FEATHERWEIGHT(-65kg)STANDING TOURNAMENT 3分3R延長1R
イ・ソンヒョン(韓国/RAON/スーパーライト級1位、第4代RISEミドル級王者、第2代RISEライト級王者)
麻火佑太郎(日本/PHOENIX/スーパーライト級2位)
